vanuatu6

　みなさん、こんにちは。石原郁子です。
　早いもので今年もあとわずかになりました。毎年あつい冬を迎えていると、日本の四季がたまらなく恋しくなります。よく思い出すのは、紅葉が散りはじめる頃の風情です。夕暮れがはやくおとずれ家々に灯がともり始める頃のもの悲しくも懐かしい風景。冬の寒さに耐えて芽生える春の青葉のみずみずしさなどが遠い日のことのように目に浮かびます。
　ここバヌアツは雨季と乾季という２シーズンしかなく、少々涼しくなっても、それはほんの1ヶ月間ほどです。長袖があれば充分です。そして又長い夏がつづきます。このところ雨が降り続きましたが、本格的な雨季にはまだ早いようです。この時期は、火山活動が活発になるらしく、タンナ島にあるヤスール火山（火口まで登れ、マグマの不気味な唸り声と噴火が見られます。日本のTVで、秘境を訪ねる番組に紹介されて有名になったようです。）や、永らく休火山だったアンバエ島のマナロ山が活動をはじめました。私たちの住むエファテ島にも時々地震があります。インドネシアのスマトラ沖で発生したような津波（M９、波の高さ３０ｍ）が来た場合、海抜１ｍの私たちのアパートでは生存は難しいようです。でもそう簡単には死なないぞ！と心に決めています。何かの本で、本気で決意したらそれはもう半分成就しているのだと書いてあったからです。相手が大自然の場合は疑問ですが・・・。つい最近パプアニューギニアで地震(M7）がありました。息子と私の友達がメールをくれ津波はどうかと心配してくれたのです。津波は起こりませんでした。私たちよりもずっと遠い日本のほうがニュースが早いのです。こんな調子では、決意もなんのその、海の藻屑になってしまうかも・・・。これ以降は、決意ではなく｢なるようになる」（なるようにしかならない）に、かえました。ちょっとステバチぎみですが気に入っています。
　
　◎大塩夫妻のこと
　11月末に私の友達夫妻が10日ほどバヌアツに来てくれました。生まれも育ちも勤めも大阪という、一生の大半を都会に暮らしてきた彼らは定年後信州の穂高に1年がかりで家を建て、移り住みました。　彼女（泰子さん）はコンピューターには強くその模様をブログで紹介しています。またインド大好き人間で、1人で７回もインドに行き、日本人の僧侶が（在インド）現地に小学校を建てる運動を応援してきました。興味のある方はこちらにアクセスしてください。

　　　URL : http://www.geocities.jp/i_loveindiajp/
　　　　 (インドの学校運営支援と旅紀行）
　　　BLOG : http://blog.goo.ne.jp/kurakura-get/
　　　　　(土蔵移築再生住宅建築奮闘記と安曇野雑感）
　
　さてこの大塩夫妻はタンナ島に二泊し、その後私たちと一緒にエファテ島の北にあるウグナ島に行きました。ビラからの交通手段はトラックです。月曜から金曜まで一日一便ほぼ定刻（1時間ほど遅れるぐらいです）にはしります。運転席のドアーには、ちゃんと　public　transport　と書いてありました。荷物と一緒に荷台に乗ります。オープンサイドで鉄格子があり屋根代わりにブルーのビニールシートがかぶせてあります。なんとなく檻に入った猿のようです。満員（約20人）の乗客を乗せトラックは舗装のない道をフルスピードで走ります。トイレ休憩はありません。約２時間後船着場に着き1人４００ｖｔを支払いました。次に乗る小型ボートにはガソリンの入ったドラム缶が積んでありました。島には車があるらしい？。ヤマハの発動機がついたこのボートは30分後ウグナアイランドにつきました。これも1人４００ｖｔです。
　電気もガスも水道もないこの地には人口1000人。内半分は首都のポートビラに出ています。ビーチから歩いて５分、２日間泊まるタリスのゲストハウスに着きました。石原の勤め先であるマラポワカレッジの司書タリスのサイドビジネスです。ゲストハウスは６畳ぐらいの大きさで、備品はシングルベッドが２つ、ソファが２つ、蚊帳１つ、柱時計とランプなどです。彼の妻の母Mrs.レイパコワ・ジョン・カルマックが私たちの面倒をみてくれました。その夜のディナーはローカルフード「タロイモ、ヤム芋、ぶっかけご飯、パイナップル、マンゴー、バナナなどの果物」でした。屋外にしつらえた四人用テーブルに、ランプのあかりでいただきました。海からの風が涼しくムシもいないので快適でした。トイレはかなり外にあり、深く掘った便つぼです。8月から今までお客がなかったのであまり臭わなかったです。でも、遠くのトイレより近くのブッシュということで、男の人たちは「蛙もミミズもごめん！」と言って、いたしていたようです。トイレは材木片とブリキで作った囲いがあり、となりがシャワールーム。一応ビニールカーテンがありました。なかには大きな金盥（かなだらい）とバケツ。屋外にある雨をあつめるドラム缶からバケツで汲み行水をするのです。よくみればムシが２～３匹浮いています。夜８時になれば島民は眠ってしまいます。太陽光発電で１時間ほどは電気が使えると聞いていたのですが、あっというまに消えてしまいました。石原は、こういう不自由を常とするのが好きなタイプです。「あ～ぁ　早く帰りたいな～」という私の思いとは別の世界にいて大いに楽しんでいるようです。ワイルド型の大塩夫妻もそれなりに楽しんでいました
　それでも夜中に見た星の多さ、巨大さは忘れることができません。首都ポートビラでは星座表にのっている星が全部見えるくらいですが、ここでは星ぼしと会話ができるくらいの近さにみえます。わたしはボォ～とたたずんで満天の夜空を心に深く刻み込みました。
　２日後同じルートで帰りました。私は運転席の真ん中に座ることができ、その隣にまだごく小さな赤ん坊を抱っこした若い婦人が座りました。ついつい可愛くてそのバヌアツ人の男の赤ん坊をだっこしました。「初めての子供さん？」と聞くと「５人目」との返事、それから彼女はずっとうたたねをしています。少しも自分の子をひきとろうとしないのです。生後２ヶ月というその男の子は私の顔を見てちょっと泣きかけましたが、横に母親がいるので泣くのを止めました。おっぱいを欲しそうな素振りをみせたので「あなたの息子はミルクを欲しがっていますよ」と言っても母親は返事せずこっくりこっくりしています。とうとう２時間の間、急な坂道や悪路につんのめりながら（シートベルトなし）生後２ヶ月とは思えない重さのボクを抱っこし続けるはめになりました。ときどきブスブスというおしりに恐怖をいだきながら・・・。
　彼女の家は私のアパートから５００ｍほどのところにありました。母親が先に下りると、赤ん坊は火のついたように泣きました。その子のおねえちゃんらしい１３～４歳の子が抱き取りにくるとピタッととまりました。やれやれ。私の手の痺れは残ったままでした。

　◎脱獄囚のこと
　１９日のデイリーポストには脱獄囚１１人の記事が載っていました。レイプや強盗殺人というのもいますが大半は、こそ泥程度です。罪を犯したバヌアツ人たち・・・・。こののどかな島の中にも影の部分があるのです。タロいもやキャッサバのローカル食を食べてウグナ島の自然と共に生きていた人たちが目に浮かびました。　私は刑務所がどこにあるのか知らなかったのですが、その日知りました。それは私が魚や肉を買いに行く山の上の途中にあったのです。そこは歩道の方が５ｍほど上で、有刺鉄線つきのフェンスでかこまれています。ビデオカメラがついていてライフルを手にした警察官（？）が数人いたようです。私が歩道を歩いていると彼らが（囚人とは知らなかったのですが）何度も手を振ってきたことがあります。私もフレンドリーな人たちだな～と思ってにっこり笑って手を振っていました。なんとものどかな刑務所風景です。
　又バヌアツは昔、英仏共同統治だったので刑務所も英国系と仏系があります。フランス系の刑務所の囲いはとても低く囚人が近所へ何かを買いにいったりもどったりできるようです。また仏系は夕食にワインが出るそうで、務所暮らしは絶対フランス系というのが彼らのささやかな願いだそうです。