vanuatu6

　みなさん、こんにちは。石原郁子です。
　バヌアツ生活も1年がすぎ、また暑い夏を迎えようとしています。この2～3日グッと気温があがってきました。32度をこえています。熱帯のこの地は、年がら年中、男女共、半袖、半ズボン、ゴム草履スタイルです。通りを闊歩する彼らの後姿から、男女の別がわからない時があります。ただ年配の婦人たちは、ちょうちん袖にリボンの付いたカラフルなアイランドドレスを着ています。総じて年が行くほど派手傾向なのは欧米人と変りません。それでもバヌアツ人は人前で肌を露出するような格好は決してしません。豪華客船で観光に来る外国人女性は思いっきり肌を露出したスタイルです。タンクトップと超ミニスカートから白い肌と豊かな胸、長い脚、おへそもみえます。腰周りや、手足にタトゥー（刺青）をしたりしています。この間、外国人女性をレイプした男(バヌアツ人）が捕まり、牢獄から逃げたというニュースが入りJICAからも警告がありました。彼女たちの、ビーチやプールにいる様なカッコウはとても刺激的で、女の私も思わず見とれてしまうことがあります。困った（？）ことです。
　バヌアツに来てから私は毎日日傘をさしています。日焼け止めクリームをつけ、時には長袖を着て買い物に行っています。それでもバヌアツの太陽は私をバヌ人化してしまいました。黒くなりました。あ～ぁ。

　◎Dr．T　のこと
　私は高脂血症で一日一錠リピトールという薬を飲んでいます。この間、血液検査を申し込みました。血液を採る時Dr．T　は私の腕を消毒しないでいきなり注射針をさしました。「あぁぁ～」と言っている間に採られてしまい、彼はわたしが血止めのガーゼを欲しがっているものと思ったのか後で小さな乾いたガーゼをくれました。
　もう薬を飲まなくても大丈夫かな？との淡い期待もむなしく、オーストラリアからファクスされてきた検査結果は、続けて服用との指示です。「アイスクリームもチョコレートもダメ」とDr．Tは笑いながら言いました。その上請求された金額は８５００ｖｔ(8500円）・・・・　　　「高いなぁ～。血を採るなら、お金は取るな！」とうそぶきながら帰ってきました。そして注射の前には消毒をするという、当たり前の行為がここでは当たり前ではないということを知りました。

　◎マンゴーシーフ(マンゴどろぼう）のこと
　マーケットにマンゴーが並ぶようになりました。大１００ｖｔ、中５０ｖｔ、小３０～１０ｖｔくらいです。我がAP(アパート）の庭にある大マンゴーはこの１００ｖｔ級です。２０～３０ｍの高さから熟して落ちるときのボットーンと言う音にはなかなか貫禄があります。ふつうのマンゴーの木より約１ヶ月ほど早く熟すため、近隣から老若を問わずマンゴーシーフがやってきます。皆ビニール袋を持ち中には2～3メーターの棒持参で入ってきます。落ちているマンゴーをひらい終わったら猿のようにスルスルと木に登り、よく熟している大きな実を落とします。（１人で２０～３０個持って帰るので１０月末で、とうとうなくなってしまいました。）５～６歳のこどもや主婦たちは木の下から石や三つまたの木の枝などを投げて実をおとします。その正確なことと言ったらありません。私も数度石を投げてみたのですが、かすりもしませんでした。あるとき我がAPのまえにある店の女店員とガードマンがマンゴーシーフをやっていました。ガードマンが木に登り約４０個ほど落としていました。私もその時庭にいたのです。私は彼らが平等に分けるのだと思っていました。彼らが大きくておいしいマンゴーのみさっさとビニール袋に入れ、私が何にも取らないのをみると、私の前にあるマンゴーまでさっさと取って帰ってしまいました。私はあっけにとられてしまったのです。私のまえには、二人が残していった小さくきたならしいマンゴーが残っていました。
　この地は弱肉強食の、われ先にイイ物を取るという所なのだと、そのとき肝に銘じました。それから１週間後JOCV(青年海外協力隊）の女性４人が我が家に来ました。彼女たちは庭に出てマンゴーの木を揺すり各自５～６個のマンゴーをゲットしてきました。それからやわら一堂に集め、じゃんけんをして勝ったものが先に取るというのを何回もやっていました。幼稚園で、しっかり躾られたという彼女たちの平等精神は、私にはとても好ましく思えました。

　◎I　have a complaint （苦情があります）
　ボンマルシェと言う名のスーパーマーケットが３軒あります。どれも同族の中国人の経営です。比較的大きな店でバヌアツでは名の通ったスーパーです。オープンマーケットの前にもあり、私はそこでグラタン皿を買いました。大､中、小と入って６５０ｖｔ（６５０円）と棚に書いてあったのですが小皿がありません。若い女店員に聞くと壊れてしまったとのこと、「それならもっと安いはず」と言うと「３つなら１２００ｖｔです。２つだから６５０ｖｔ」と言います。レジの女の子にも同じ質問をしたのですが、同じ答えが返ってきました。チョッと疑ったのですが、どうしてもその日に必要だったので買って帰りました。別の日にナンバートゥのボンマルシェ（ここは一番大きな店です）に行った時偶然にも３ツぞろえの同じグラタン皿を見つけました。きっちり３つ入って６５０ｖｔと書いてあるではありませんか！私はあの時騙されたのだと気が付きました。バヌアツ人はお口が上手なのです。電気屋もガス屋もこのAPの家主も約束した時に来たためしがありません。｢又あした来ます」というのは｢もう決っして来ません」と言うのと同じ意味だと胆に銘じていたはずが、きれいに見事に騙されたのです。いかにも本当のように上手にウソをつくというのが許せなくて、領収書を添えて次の日に私は単身ボンマルシェにいきました。
　「I　have　a　complaint。（　ヘタな英語もこの時は真剣です。）
　Can　I　inquire　for　the　boss　now？」
結局ボスには会えずスーパーバイザーのお姉さん(バヌアツ人)に話しをしました。
　　　「平気でだますというのが我慢ならない。」
　　　「この店が信じられなくなった。」
　　　「日本では信用というのが一番大事。」
　知っている文章を一生懸命繋ぎました。スーパーバイザーのお姉さんは、謝り、真剣に聞いてくれ「明日きちんとそろえておく」と約束してくれました。次の日行くと新しいのを渡してくれ、店を出るとき中国人のボスが「Sorry」と言ってくれました。
　いつも見慣れている海と空の景色がなんとなく光り輝いたようなそんな一日でした。

　◎クリスティ・ロックウッドライルズさんのこと
　ひとずてに聞き、紹介を受け週1回1時間彼女に英語を習っています。それでも私の英語は一向に上達しませんが、彼女のはきはきした性格が好ましく年齢も67歳と、私に近いこともあって、週1回彼女の家に行くのを楽しみにしています。プール付きの豪邸で、広いベランダからビラ湾が一望のもとです。1964年25歳の彼女は1歳年上の夫と6歳と4歳の子供を連れてイギリスからシドニーに移住してきました。そして６年前リタイアした夫と共にこのバヌアツに移ってきたのです。シドニーではアナウンサーをしていたという彼女の発音は聞き取りやすく、英国風です。英語を教えたりファブリックペインティングの指導をしたりする外に、彼女には又違った一面がありました。街角に立ち募金活動をしています。バヌアツの中央病院では、予算が少なく入院患者に食事があたらないそうです。病人の親族が余った食べ物を持って行ったりしているということですが、中には何にも食べられない患者もいるそうです。それを知ってから彼女は募金活動をはじめました。週４回マーケット前や人の集まるところ、観光船のつく波止場や、時には飛行場にもでかけていきます。入院患者のためにひたすら彼女は人前に立ちます。彼女はオーストラリア人ですがバヌアツの人たちのために一生懸命の毎日を送っています。｢教会には今行っていないの」という彼女の笑顔が、私の心にジンと沁みました。素敵な人と知り合いになれたことを、感謝する毎日です。