vanuatu6

　みなさん、こんにちは。
石原の家内の郁子です。バヌアツでは、ミセスイシハーラとかコーコとかイクコサーンとか呼ばれています。以前住んでいたアフリカのザンビアではワーカーの人たちからマダムと呼ばれていました。どう考えてもマダムという柄ではないのですが、深く考えることはせずにハイハイと返事をしていました。時々来られるミセスピリ（オックスフォード大学出の英国人女性。65歳位）にはワーカーたちはマダムと言わずレディと呼んでいました。風格の違いをまざまざと知ったものです。
美しく凛としたミセスピリは、主人の憧れの人でもありました。

バヌアツは今、夏から秋に移ろうとしています。一主婦の平凡な毎日の暮らしの中から見たバヌアツを書きとめてみました。
　◎特異体質パート２
　両足をブヨに刺されてDrｽﾌﾟｰﾅｰの所に行ってから一週間後私は隣のルイスに付き添われて、ルイスの薦めるDr.トゥりマヌ（ツバル人）の所に行きました。外に出ないようにしているのにもかかわらず虫に刺され続け、かなりナーバスになっていました。｢日本に帰る！。もうイヤ！」と言うところまで神経質になっていました。そんな私を心配してルイスは殺虫剤を持ってきて私の家の中に撒き、ベッドマットの裏にも直接噴射しました。その時階下に住むダイアナ（フランス大使館勤務）も、やって来てマットの縫い目に虫がいないか調べてくれました。親切な人たちです。
　私は親に付き添われた子供のようにDr.トゥりマヌの前で何も言わず足だけ見せました。ルイスがみんな説明してくれたからです。（ルイスは私より6歳若い）そしてDr.トゥりマヌはそっと私に言いました。　「Dr.ｽﾌﾟｰﾅの処方した塗り薬よりイイのを出しておくからね」と。階下の薬局で待っていると老薬剤師は｢その薬は今切れている。これにしておく」とDr.ｽﾌﾟｰﾅｰと同じ薬を出しました。「それなら持っている。Dr.トォリマヌの薦められたのが欲しい。」と言うと｢薬効はいっしょ。どれも変わらん」と高飛車で取りつく島もありません。結局買わずに帰ってきました。それでもルイスのおかげで、それからは虫に刺されることもなく,みずぶくれも治り、暑い毎日をなんとか過ごしていました。
　一年間の休暇を楽しんでいたルイス夫妻が3月になってから急に働きだしました・ルイスはケースワーカーとしてプライマリースクールに、夫のトレボーも毎日出かけています。私は又、ポツンと一人ぼっちになってしまいました。
　◎USPのこと
　バヌアツには南太平洋大学（USP）の中の法学部があります。思い立ってUSPに行ったのは昨年の10月のことです。英語を教えてくれるオープンスクールがあるかも？と、ひとずてにきき一人でミニバスに乗りました。初めて行ったUSPは南国の木々や花の中にあり芝生が青々としている丘の上にありました。単科大学なのでこじんまりとしています。私は事務所を訪ね、たどたどしい英語で聞きました。「来年の１月から受付で２月から始まるからその時来るように」との返事。｢あと３ヶ月も待てない。誰か教えてくれませんか？」と言うとチューターのヘレン・タムタムのところへ案内してくれました。｢１２月末に１週間位なら教えてあげよう」と言う返事。でも私たちの引越しと重なりそれもかなわずで日が過ぎていきました。１月１７日に申し込み、入学許可をもらって２月８日の初授業を待ちました。２／８に行くと｢来週からだ」と言われました。２／１５に行くと「２／１４から始まっている」と言われ週１回なのがいつの間にか週２回になっていました。この間の連絡はありません。｢何で連絡してくれないの？」と怒ると「あなたのすることは今日帰って明日来ることだ」と言うので「昨日から始まっていたのでしょ！」と語気を荒げると｢イヤ、明日からです」と言う返事。次の日行くとチューターのカロタップ・マライ先生(２５歳男性）は｢何で１４日に来なかったんだい？」と聞かれました。それでもヤレヤレやっと始まったか！と思ったのも束の間、コピーができていないとかでその日はノークラスでした。次の２１日は祝日で休み。その次の水曜日は、教室がとれなくて(他の先生が使用）ノークラス。カロ先生は急に水曜日から金曜日に日を変えて、やっと初授業が始まったのは２５日でした。５時～７時PMの社会人のための英会話クラスです。私は初級を申し込みましたが、たった２人だったらしく中級の中に勝手に入れられてしまっていました。その間の連絡はなし。それでも全員で５人ポッチです。バヌアツ人のカロタップ先生は、いつもは工業系の専門学校で英語を教えているそうでいわばパートタイマーなのです。給料は非常に低いというので「要求すれば？」と、私が言うと｢日本なら要求すればたくさんもらえるかもしれないが、バヌアツでは蹴散らされる。」と、自分でキックをしました。そうなのです。バヌアツは物価が高く給料が低いのです。ヘタに抗議すればすぐに辞めさせられるようです。
　元にもどりますが、初授業は１時間１５分で終わりました。３月になり４日は東海大学の学生７０人がUSPを訪問したため授業はなし。この時は連絡がありました。７日は待てど暮らせど先生来ず。私はミニバスに乗り帰宅しました。１１日に聞くと病気だったとのこと。「どうして連絡してくれなかったの？」と聞くと｢貧乏で電話のカードが買えなかった。」と言い、ことさら謝る様子もありません。この日は１時間の授業。１４日は生徒が４人になり（いままではずっと２人）１時間４０分の授業がありました。USPには日本人の先生が２人おられます。JICAのシニアボランティア(SV）でコンピューターを教えているHI氏と日本語を教えているHO氏です。日本人が教える場合、時間が正確で連絡がバッチリなので日本人に教えてもらっている学生はホントに恵まれてといるなと思いました。
　いついつまでにここまで教えるというのは全くなく、会話クラスなのに文法ばかりやっています。テープを聴く問題が多いのにそのテープがみつからないのだそうです。多分ないのでしょう！私もだんだん慣れてきて、「シャーナイ」と思うようになりました。いいかげんさに騙され慣れてくると何だか小気味よくなってきます。「今日はどうかな？先生来るかな？」なんて、変なところに興味がわいてきます。彼らのフレンドリーな笑顔と底抜け（？）の楽天さが憎めないのです。南国のゆったり過ぎる時間のなかに身をおくと、好き好んで先進国のように、きっちりやらなければならないなどとは考えないようです。今日がダメなら明日にしな！と言う調子です。
　南太平洋というイメージそのままにどこまでも続く青い空と海。３０メートルを超える木々と燃えるような花々。この美しい島国にも好むと好まざるにかかわらず文明の魔の手が忍び寄っています。この２～3年のあいだに車の数が増え続けおびただしい中古車の出す排気ガスがこの国の人たちのきれいな肺をじわじわと犯しています。排ガス規制のないこの国には、モクモクと黒煙をあげながら走るポンコツ車が多く、又そういう車にのっているのはたいていバヌアツ人なのです。外国人はイイ車に乗っています。排気ガスを出す人、吸う人、共にこの国の大切な大人と子供なのです。後進国のままでいることのむずかしさをつくづくと思いました。