tuusin33

　みなさま、新年あけましておめでとうございます。おかげさまで、私たち夫婦はザンビアの地で元気に新しい年を迎えることができました。同時に、私の任期もあと３ヶ月を残すのみとなりました。
　昨日の大晦日は半日勤務だったので、午後はふたりでマンダヒルに買い物に出かけました。ザンビア人は１２月のはじめからクリスマスの準備を始めますが、お正月は特別の準備はしないようです。私たちもおせち料理の材料など手に入りようがないので、単に４・５日分の食材を買っただけです。夜は紅白歌合戦を見るわけにはいかないので、その代わりに「北の国から・総集編」（前・後編、６時間）のビデオをワインを飲みながら楽しみました。途中、午前０時頃に爆竹の音が１０分ほど続きましたが、これはムルングシ村がやったのか、ムルングシ村に住む中国人がやったのかどちらかわかりません。
　元日の朝もお正月の雰囲気のない普通の朝でした。旅行に出かけている人が多いのか、ムルングシ村は特に静かでした。私たちは遅い朝食の後、映画を見に行くことにしました。実は、１２月の中旬にマンダヒルから５００～６００ｍ離れたところにＡｒｃａｄｅという新しいショッピングセンターができて、その中に映画館が出来たからです。Ａｒｃａｄｅも南ア資本ですが、オープンの日には大統領のモノワサもやってきて、お祝いのあいさつをしました。ザンビアの購買力では、こんなに隣接して２つのショッピングセンターがあってやっていけるのだろうか心配していましたが、案の定Ａｒｃａｄｅの客の入りはマンダヒルの半分以下で、マンダヒルの倍以上ある駐車場はガラガラです。Ａｒｃａｄｅには何とボーリング場もできました。人の余っているザンビアだから、客がボールを投げてピンを倒すと、後ろからザンビア人がのそっと現れてピンを並べ直すのだろうと思っていましたが、そうではなく、日本と同じく全自動でした。映画館もホールが２つあって、５つの映画を時間差で同時上映していました。私たちは案内の写真を見て、英語がもうひとつでも分かりそうな映画ということで、”ＴｈｅＬｏｒｄ of ｔｈｅＲｉｎｇ”という映画を見ることにしましたが、いまひとつよくわかりませんでした。気味の悪い映画で、多分ハリー・ポッターの原作の映画化されたものだと思います。入場料はひとりＫ２万（５００円）でした。
　ザンビア政府はザンビア人の起業を奨励していますが、いっこうに成果があらわれません。銀行の利息が高すぎるからだと思います。一般的なザンビア人の夢は、道ばたに小屋を建て、日用品やコーラを売る店を開くことみたいです。いつだったか、私のカウンターパートだったMr.チュトュ（１月からコンパウンドにあるＢａｓｉｃＳｃｈｏｏｌの教頭さんに栄転）が「日本から中古のコピー機を安く買えないか」と私に聞いてきました。「何をするんだ」と私が聞くと、「サイドビジネスをしたい」と言います。ザンビアではコピーの需要が結構あり、Ａ４サイズ１枚がＫ５００（約１３円）です。月に５００枚の利用があると売り上げはＫ２５万、紙代Ｋ３万とトナー代Ｋ２万を引いても純益がＫ２０万出ます。ザンビアでは公務員の副業は認められていますが、考えることが余りにもみみっちぃ。私は即座に断りました。
　１２月２日に妻の古い友人の大塩さんがやってきました。彼女はインド大好き人間で、勤めを持ちながら７回もインドに行っています。妻とは対照的に、好奇心と行動力のかたまりみたいな女性です。今回も、われわれがいる間にぜひアフリカに来たいということで、退職してやってきたそうです。こちらでは、妻がルサカ市内を案内、ＪＩＣＡ事務所や私の職場にもやってきました。また、妻といっしょに２泊３日でサウス・ルアンガにも行きました。大塩さんは１２月１０日にリビングストンに向けて出発、ビクトリアフォールのザンビア側で２泊、ジンバブエ側で１泊して、ボツワナのチョベ国立公園、オカバンゴへ。そのあと砂漠の国ナミビアに行き、ナミビアから南アのケープタウンへ。そして１２月２３日、ケープタウンから日本へ帰っていきました。私たちは彼女のものすごい行動力にただただ感嘆するのみでした。
　彼女のお陰で私の仕事にも進展がありました。彼女が来るまでに私は４９の実験器具を開発・紹介していました。５０が目標だったので、最後は何にしようかと迷っていました。そこに彼女が来たのですが、彼女は竹とんぼを持ってきていました。アフリカ人へのおみやげにもなるし、アフリカの大地で自分でも飛ばしてみたかったからです。それを見て、５０番目は竹とんぼに決めました。竹とんぼは揚力、飛行の原理を教える教材になると考えたからです。彼女の好意で３つ持ってきた竹とんぼの２つをいただきました。翌日、それらを見本にして職場で作ってみました。ザンビアにも竹はあるのですが、すぐには手に入らないので、柔らかくて軽い木を削って作りました。飛ばしてみると見本よりよく飛びます。昼休みに駐車場で飛ばしていると、工場のワーカー達がやってきて、俺にもやらせと引っ張りだこでした。竹とんぼは彼らがはじめて見るおもちゃでした。午後からあと２つ作って、次の日の昼休みは竹とんぼ大会でした。
　その一週間後、私は所長のMr.ムンゴといっしょにザンビア大学に行きました。ザンビア大学教育学部で理科教育を教えているロシア人の教授Prof.コステュークに会うためです。私は実験器具を開発すると同時に製作ノートを英文で作ってきましたが、それは５０になったら冊子にしてザンビア中の学校に配ろうと思ったからです。英文については毎回、Mrs.ムショーカ（ＺＡＳＥの高橋さん）にチェックしてもらっていましたが、最終的にProf.コステュークにチェックしてもらい、出来れば冊子の推薦の序文を書いてもらおうと思ったからです。私は自分の製作物（ほとんどは日本各地の先生たちのアイデア）には自信を持っていて、ＵＮＺＡ（ザンビア大学）の教授に教えを乞う気は全くないのですが、ザンビアの先生たち（大部分はカレッジ卒）にとってＵＮＺＡは権威の象徴なので、それを利用した方が私の製作物を浸透させやすいと戦略的に考えたからです。
　Prof.コステュークもLow-costの実験器具を開発していた関係で、Mr.ムンゴとは旧知の仲でした。Mr.ムンゴが私の用件を代わって伝えてくれました。彼は、１月はマスター論文の審査会があって忙しいが、何とか時間を作ってＮＳＣに行きたいと言ってくれました。私はおみやげに例の竹とんぼをあげましたが、彼は竹とんぼの存在を知っていました。いろいろ話をしたかったのですが、彼が忙しそうだったので、また１月にお会いしましょうと言って私たちは帰りました。
　１２月にもうひとつ懸案事項を片づけました。それはサイエンス・チャートの制作です。視聴覚機器の整備の遅れているザンビアでは、説明用チャート（大きな図表）は授業で極めて有効です。２００２年度にＮＳＣは、美術系学生を雇って、グレード８・９年生の「環境科学」用チャート５８枚の原図を作りましたが、莫大な印刷費がかかるため、印刷することができませんでした。それを携行機材費（職場へのドネーション）で買ってもらった大型プリンタでプリントアウトすることを試みました。作業手順は、まず、デジカメでチャートの原図の写真を撮り、コンピュータに取り込んだ上で、画像ソフトのペイント・ショップで画像を修正、説明の文字を再入力します。そうして作った画像ファイルを大型プリンタでＡ１サイズで出力するのですが、出力した画像は原図よりも良質のものでした。でも、大型プリンタによる印刷は、時間がかかるのと、インクが高くコスト高なので大量印刷には向きません。結局、大量印刷するには教育省の予算をまたねばなりませんが、印刷にまわす原図はほぼ完璧のものができました。
　１２月は我ながらよく頑張ったので、１２／２４～２８、クリスマス休暇をもらって、南アのケープタウンに行ってきました。詳しくご報告するスペースがありませんが、ケープタウンはまるでヨーロッパです。テーブルマウンテン、ウォーターフロント、ＳＡ博物館、植物園、喜望峰、ペンギンのいる海岸等美しい風景をいっぱい見てきました。残念だったのは、南アのクリスマスの雰囲気が味わえると思って行ったのですが、全く味わえませんでした。きっと、家庭に伺うか教会に行かないと無理なのかもしれません。それと、ネルソン・マンデラが２７年間投獄された島に渡ろうと思ったのに、切符が売り切れで渡れなかったことです。ネルソン・マンデラは今でも国民的英雄で、誰もが敬愛しています。